
ホテルや旅館とは一味違った滞在ができる民泊はコロナをきっかけにワーケーションの滞在先としても需要が高まってきています。家の使っていない部屋やマンションの一室を民泊として使用したいと考えている方もいるでしょう。
民泊を始めるときには個人でやる方法と法人化するやり方があり、それぞれでメリットやデメリットもあります。そこで今回は個人と法人での民泊運営について詳しく解説していきます。
民泊の事業形態には法人と個人の2種類がある
民泊をやる際には個人で運営をするか法人化してビジネスを行うかの2つの方法があります。2つの事業形態について知っておけば、実際に運営を始めるときにどちらでやっていくかを選択しやすくなります。
法人
法人とは、法律によって権利や義務が与えられる組織のことを指します。株式会社やNPO法人、合同会社なども法人に含まれ、様々な形態がありそれぞれによって設立方法も違ってきます。
民泊ビジネスを法人化する場合、社員が自分1人だけでも問題はありません。法人化するには費用はかかりますが、個人に比べて経費で計上できる幅が広がったり社会的信用度が高くなったりとメリットも多いです。
個人
もうひとつは個人事業主として民泊ビジネスをやることです。開業届を出すだけなので基本的にコストがかからず、すぐに始めやすいのもメリットです。
また、法人に比べると手続きも難しくないため自分で確定申告や税金の処理もやりやすいです。「最初から法人化するのは不安……」と感じる人は、始めは個人事業主として申請を出して、運営を進めていく中で良いタイミングを見つけて法人化するのもひとつの方法です。
民泊を法人と個人で運営する際の違い
では、法人と個人ではどのような違いがあるのでしょうか?ここでは申請に関する書類と税金、そして経費の3つの観点から違いを解説していきます。どちらで民泊の運営をしようか悩んでいる人はまず違いをきちんと理解することから始めましょう。
申請書類
民泊の届出をする際に必要な書類は主に届出書や住宅の登記事項証明書、消防法令適合通知書などが必要になります。個人で運営をするのであれば、書類を集めてそれぞれの自治体へ届出をすれば民泊を始めることができます。
しかし法人の場合は元々の必要書類に加えて定款や会社の登記事項証明書などを用意しなければなりません。また、登記申請も行わなければいけませんが、登記をする際には定款も必要です。定款を作成して承認をもらうにはおよそ5万円の費用がかかるため、個人でやるよりも時間もお金もかかります。
法人でやりたいけど1人でできる自信がないという方は税理士に頼む方法もありますが、どちらにせよ必要な書類は個人よりも多くなります。
支払う税金
支払わなければいけない税金にも違いがあり、それぞれで支払う税金は以下の通りです。
法人 | 個人事業主 |
法人税 | 所得税 |
法人事業税 | 個人事業税 |
消費税 | 消費税 |
中でも大きく違うのは法人税と所得税でしょう。所得税は所得が上がれば上がるほど課せられる税率も高くなります。最高で45%の税率が適用されることもあり、所得が高すぎると半分は税金で失くなってしまうなんてこともあります。
一方で法人税の最高税率は23%と所得税ほど高くはありません。そのため、儲けの金額によっては法人税の方が納税する税金が少なくなることもあります。しかし法人にかかる法人住民税は7万円からとなっており、業績が悪く赤字になったとしても毎年支払う必要があるので注意が必要です。
経費にできる幅
確定申告のときにも必要になる経費は納める税金額を大きく左右します。個人でももちろん経費は計上できますが、法人の方が経費にできる項目が多いです。例えば、法人化することで自分の給料も経費にできます。もし自分の家族が従業員になった場合の給料や生命保険、その他にも家賃や光熱費も経費として計上できるため節税にも繋がります。
また、法人だと交際費は年間800万円まで経費に認められます。個人では交際費に限度額は設けられていませんが、交際費はプライベートとの線引きが曖昧な部分も多いため金額が大きすぎると税務調査の対象になる可能性もあります。
このように、節税のことを考えると個人より法人の方が経費にできる範囲は広いです。
法人で民泊運営をするメリット・デメリット
法人と個人の違いを理解したうえで次に考慮すべきなのがそれぞれのメリット・デメリットです。いいところだけでなく、リスクも含めて両方の特徴を理解しておきましょう。まずは法人について解説していきます。
メリット
法人化する大きなメリットは先述したように経費にできる幅が広がることです。給料や退職金、出張に行った場合は日当も経費になり、さらには税理士を雇ったお金なども計上できます。
もうひとつは個人事業主よりも社会的信用が大きいことです。法人化するということは役場で定款の認証を受けたり法務局で設立登記をするなど手続きに手間も時間もかかります。しかし、その分社会的信用を得られやすくなり、融資を受ける際にも不利な立場に置かれることは少なくなります。
デメリット
法人のデメリットは会社設立に関しての手続きが複雑で費用もかかることです。印鑑証明書の取得や定款の作成と承認、設立登記の申請など、やることが多く1ヶ月はかかると見込んでおいたほうが良いでしょう。費用だけでも最低20万円はかかります。
また、個人事業主であれば赤字になった場合は納税が不要になりますが、法人では利益が出ずに赤字になっても税金を払う必要があります。特に法人税は7万円〜となっているため業績に関係なく支払わなければなりません。
個人で民泊運営をするメリット・デメリット
個人事業主のメリットとデメリットについては法人と逆に考えるとイメージしやすいです。自分の思い描くビジネスプランはどちらの方が合っているのか、様々な面で比較しながら考えてみてください。
メリット
個人事業主は登記申請などは必要ないため手続きも簡単で始めやすいのがメリットです。初期費用も特にかからないため費用を抑えて事業を始めたいという方におすすめです。
また、法人と比べて税金の計算が難しくないので、確定申告などの税に関することも自分でできます。最近は会計ソフトも充実しているため記録もしやすいです。他にも、一定の金額を超えると所得税はかなり高くなりますが、所得が少ないうちは所得税の方が税率は低くなります。
デメリット
個人で事業を行う際は開業届を出すだけでいいので、いつでも開業したり廃業もできます。しかし、簡単がゆえに法人と比べると社会的信用は低くなってしまいます。
さらに、経費にできる範囲が狭いというデメリットもあります。経費の上限自体はないものの、収入に対して経費の額が高すぎると税務署の調査が入ることもあるので注意が必要です。所得に関しても、増えれば増えるほど税率が高くなります。
民泊ビジネスを法人化する際の注意点
法人設立をすると、個人事業主にはない注意点がいくつかあります。もし民泊を始めるにあたって法人化しようと考えている方は、これから紹介するいくつかの注意点を必ず頭に入れておきましょう。
会計処理の手間が増える
個人であれば基本的には確定申告をすれば良いですが、法人は税金の申告だけでなく決算書を作成する必要もあり、会計や手続きの数も個人よりかなり多くなります。
例えば会社名を変えたり住所を変更した際はもう一度手続きをしなければいけないうえに費用も数万円かかります。こうした手続きに加えて経理の作業もあるため、税金に関する知識も必要になります。
事務手続きや会計処理に時間がかかると事業も効率よく進めることができなくなるため、税理士を雇うケースも多いです。税理士への依頼料は経費で落とせるうえに、税理士を雇えば自分達の事業により集中することができます。法人化をすることで節税のメリットも多くありますが、その分様々な手続きの手間も増えることは覚えておきましょう。
役員報酬を1年間変更できない
毎年決められる役員報酬について必ず知っておかなければいけないことがあります。まずは役員報酬の金額を決めるのは事業年度の開始日、もしくは会社設立日から3ヶ月以内です。この期間内に決定をしなければなりません。そして一度決めた金額は変更することができません。前年度の収益が良かったからといって高額に設定したり、逆に低くしすぎたとしてもその金額を増やすことも減らすこともできないのです。
場合によっては高額の税金を払うことになる可能性もあるので、役員報酬については慎重に考えていく必要があります。会社の事業計画や今年の収益の見込みなど、様々な面を考慮しながら決めるようにしましょう。
社会保険への加入が必要になる
個人事業主は社会保険の加入は任意ですが、法人設立するのであれば加入が必須になります。社会保険の果たす役割は以下の5つです。
- 医療保険
- 年金保険
- 労災保険
- 雇用保険
- 介護保険
従業員にとっては万が一けがや病気などで働けなくなった場合の備えになりますが、保険料は会社と社員が半分ずつ負担する仕組みになっています。つまり、雇う従業員が増えるとその分会社が支払う保険料の金額も増えていきます。そのため、保険料を支払うことが会社の経営を圧迫する可能性もあるのです。
社会保険料に関してはメリットも大きい分、コスト面を考えるとデメリットになることもあります。個人事業主から法人化しようと考えている場合も、社会保険に必ず入らなければいけなくなることを覚えておきましょう。
赤字でも法人税がかかる
個人で民泊を運営していてもし赤字になってしまった場合、所得税を払う必要はありません。しかし、法人で支払う法人税は業績に関係なく均等割で課税されるされるため、必ず支払わなければいけない金額があります。従業員数や資本金によって均等割額は変わりますが、法人の規模が小さくても7万円は必要になります。そのため、自然災害や気候などで民泊の予約率が上がらず赤字経営になると法人税の7万円が負担になるかもしれません。
しかし、赤字決算になったとしても翌年以降で繰り越すことが可能で、黒字経営になった場合にそれを相殺して税金の負担を軽減することもできます。
まとめ
いかがでしたか?個人と法人では税金や経費の幅、申請に必要な書類などに違いがあります。それぞれの事業形態の特徴をメリットと捉えるのかは人それぞれでしょう。もし利益があまり見込めないと感じたら、最初は個人事業主として民泊を始めてビジネスが軌道に乗ってきたら法人化するというのもひとつの方法です。
自分が何を重視するのか、将来のビジョンや事業プランを元に双方のメリットとデメリットも理解したうえで事業形態を選んでいきましょう。
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