
目次
容積率とは!?
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことです。建物を建てるための規制であり、容積率を守ってホテルや民泊などを始めることが求められます。土地の広さに対する建築物の規模に関してルールが決まってるのです。これは、その建物を利用する人の安全や快適さを考慮したものです。規制を設けることによって、建物が適切に利用されるようにしています。
容積率のポイントは延床面積です。延床面積とはそれぞれのフロアの床面積を足し合わせたものです。したがって、容積率はその土地に対して何階建ての建物を建てることができるのか示しているといえます。延床面積はそのフロアのすべての面積を足すわけではありません。ロフトや玄関、バルコニー、ベランダといった部分の床面積は除外して考えます。さらに、ビルトインガレージや地下室なども面積から割引きます。
たとえば、敷地面積が100㎡で1階の床面積が50㎡、2階の床面積が25㎡の場合は、容積率は下記の通りです。
容積率=(延床面積/敷地面積)×100=(50+25)/100×100=75%
容積率が制限される理由
どうして容積率があるかといえば、それは人口を制限するためです。狭い土地に階数の高い建物があると、処理能力が限界に達してしまい、快適に過ごすことができなくなります。たとえば、水道や電気といったインフラの処理能力に対する負荷の問題が考えられます。そこで、容積率という制限を設けて、その土地に建てられる建物のスケールを制限しているのです。容積率は用途地域ごとに細かく決められています。これを指定容積率といいます。
容積率は地域によって異なっていて、200%や500%が上限となっている場合もあります。ただし、低いところでは50%や100%といった制限がかかっているところも少なくありません。
仮に容積率がなかったとすると、住宅街のなかに大きな工場が建てられるといった事態が考えられます。あるいは、住宅街に高層ビルが建てられるケースも考えられるでしょう。これでは日照の問題などが発生するため、住宅街としての環境が損なわれます。住宅地であれば住宅地らしい環境を維持できることが望ましいため、容積率が決まっているのです。基本的に住居系の用途地域で住宅が密集しているところは容積率の制限が厳しくなっています。
マンションの容積率の特例とは!?
容積率が緩和される特例があります。たとえば、マンションに関しては共用部分の延床面積について容積率の計算の際に除外してもよいという特例があるのです。共用部分とはエントランスや廊下、ホール、階段などが含まれます。建築基準法の第52条の6に容積率の不算入措置の条文があります。
容積率の特例が適用されれば、狭い土地により広いマンションを建てることができます。マンションに特例が適用される場合は、ほかの建物と比較したときに共用部分が除外されることによって、より高い建物を建てることが可能です。マンションは1つのフロアに複数の部屋を設ける必要があるため、一般の住居とは環境が異なると考えられており、容積率の特例が認められています。
仮に容積率の制限が敷地面積が200㎡で容積率400%の制限のある土地を考えます。この場合、通常は床面積の限界は800㎡です。各フロアの床面積が100㎡とすれば、8階建てが限度となります。ただし、同じ条件で共用部分の床面積が200㎡のマンションを建てる場合は、床面積の限度は1000㎡となるため、10階建てのマンションが建てられるのです。
1棟マンションで旅館業許可取得が難しいのはなぜか!?
1棟マンションを利用して旅館業許可取得を得ようとするのは難しいとされています。なぜなら、容積率の特例はあくまでもマンションに該当するものであり、住宅用以外の用途では適用されないからです。この特例はあくまでも住宅用マンションを想定しています。そのため、多くのマンションは普通の建物よりも高層にできるのです。しかし、ホテルや旅館などは旅館業を営むための建物であり、住宅用であるとは認められません。そのため、特例からは除外されるのです。
たとえば、これまでマンションの経営をしていたけれども行き詰まり、ホテルに改装することにしたケースを考えましょう。この場合は建物の用途変更をする必要があります。しかし、この建物の容積率はマンションの特例を受けているから限度に達していない状態なのです。宿泊施設にしようとすると容積率がオーバーしてしまうため、用途変更が認められないという問題が発生します。これが1棟マンションにおいて旅館業許可が取得しにくい大きな理由となっているのです。
容積率緩和の意図
日本は海外からの外国人客を呼び込もうと必死になっていて、そのおかげで年々観光客は増えています。しかし、そのことによって宿泊施設が不足していて問題視されているのが現状です。このままではせっかく日本に来たいと思っている観光客を受け入れる体制が整いません。そこで、宿泊施設を整備することを目的として「宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設」が実現されました。これによって、容積率の緩和制度が生まれたのです。
ホテル用途であれば、従来の容積率の限度を超える建物で宿泊業の許可を取得できるようになりました。具体的には指定容積率の1.5倍以下、なおかつ+300%を上限として容積率が緩和されたのです。たとえば、指定容積率が400%の土地で容積率600%のホテルが認められるようになります。
容積率緩和メニューとして高度利用型地区計画や高度利用地区、再開発等促進区といった複数の地区計画が用意されました。これらの地区計画は、地区の目標とする将来像を設定して、その実現のために建築に対する制限や緩和を設定するというものです。これらを導入することで容積率を緩和させることができれば、その地域のホテルの数を増やせるでしょう。
自治体ごとに確認が必要
容積率緩和の制度はあくまでも限度を示しているだけであり、緩和の上限をルール化しているだけです。実際には容積率の設定はそれぞれの自治体に委ねられています。その地域の都市計画を考える主体は自治体であり、緩和を実行するかどうかはすべて自治体の意向によるのです。したがって、いくら国が宿泊施設を増やしたいからといって、自治体に容積率の緩和を強制することはできません。そのため、事前に自治体に容積率の緩和について確認しておきましょう。
さいごに
自由に建物を建てることを許してしまうと、電気や水道などインフラの処理能力の問題、隣接する建物の日照問題などが起きます。そこで、容積率には制限が設けられていて、その範囲内の規模の建物しか許されていません。ただし、マンションについては共用部分を除外することで容積率の緩和が行われます。
さらに、近年、日本を訪れる外国人観光客が増えていて、より多くの宿泊施設が求められていることから、宿泊施設の容積率を緩和してよいという通知が国から出されました。これによって、実際に宿泊施設の容積率の緩和を認める自治体が増えています。宿泊施設のなかには民泊も含まれているため、1棟マンションで民泊を始める場合にも、容積率の緩和が適用されることがあるのです。ただし、自治体ごとに容積率の緩和を許すかどうか異なっているため、事前に確認しましょう。