【旅館業法】フロント(玄関帳場)とは!? 無人化運営のポイントを解説

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【旅館業法】フロント(玄関帳場)とは!? 無人化運営のポイントを解説

目次

旅館業法の改正により、民泊を開業しようと考えている方もいるのではないでしょうか。民泊を開業するにあたり、きちんと旅館業法を理解する必要があります。民泊を新たに開業しようと考えている方の中には、玄関帳場(フロント)に対して誤解した解釈をしている方が多いようです。玄関帳場について正しい解釈をすることで民泊を開業する際の手続きがスムーズになるでしょう。玄関帳場について正しく理解するには、正しい知識と解釈のポイントを押さえておくことが重要です。そこでこの記事では旅館業法における玄関帳場の説明や間違えやすいポイントについてご紹介します。

旅館業法における玄関帳場とは!?


旅館業法においての玄館帳場とは旅館やホテルに設置してあるフロントのことをいいます。フロントはホテルや旅館のスタッフが主に宿泊者の確認を行うための設備です。

フロントの設置は旅館業施行令や旅館業法施行規則において規定が定められています。フロントを設置するスペースを確保しなければならないので、ホテルや旅館を開業する際にひとつの障害となる場合もあるようです。

玄関帳場の設置義務について

ホテル営業や旅館営業をする宿泊施設は旅館業法で定められている機能をもった玄関帳場(フロント)を設置しなければなりません。これは旅館業法施行令で定められています。

宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること(旅館業法施行令第一条二)

玄関帳場の設置場所については旅館業法で明確な記載はありません。各都道府県の条例によって規定がある場合が多いです。玄関帳場を設置する際には各都道府県の条例もきちんと確認しましょう。一方、民泊をはじめとする簡易宿泊所では、玄関帳場の設置義務はありません。しかし、上乗せ条例によってフロントの設置が義務付けられている地域もあります。

上乗せ条例とは、旅館業法に関して各都道府県が制定している条例のことです。民泊を開業する際は、この上乗せ条例もクリアしなければなりません。民泊を開業する際はフロント設置の記載が条例にあるかどうかきちんと確認をしましょう。

玄関帳場に必要な機能について

玄関帳場に必用な機能は旅館業法施行規則によって定められています。

第四条の三 旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号。以下「」という。)第一条第一項第二号の基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
二 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。

これらの基準を満たすために多くの旅館やホテルでは対面式構造の玄関帳場を採用しているようです。対面式構造のフロントはチェックインの際に宿泊客が記載した宿泊者名簿を素早く確認できます。また、宿泊客の顔を直接確認しながら適切な鍵の受け渡しも可能です。民泊などの簡易宿所の場合はフロントを設置する義務はありません。その代わり旅館業法施行規則第四条の三のすべてに該当する代わりの設備が必要となりますので注意しましょう。

民泊でフロントを設置しない場合はICT機器などの設備を設置することをおすすめします。ICT機器を導入する際にも細かい規定があります。その中でも宿泊者が急病など緊急の事態が発生した場合に宿泊施設のスタッフや管理会社に対して緊急通報するための電話などの通信設備を客室や通路などに設置しなければなりません。

また、緊急連絡を受けた場合、宿泊施設や管理会社のスタッフが徒歩や車などの手段を利用して、おおむね10分程度で駆け付ける体制が必要だと定められています。民泊を開業する場合、緊急事態に駆け付けられる体制を整えておかなければならないので注意しましょう。

玄関帳場の間違えやすいポイント

民泊を開業するにあたり、守らなければならない法律は旅館業法だけではありません。今回改正された旅館業法施行令や旅館業法規則、各都道府県が定める条例など実にさまざまです。中には旅館業法だけを見て玄関帳場について解釈をする方もいます。そのため、誤った解釈をしている方が多いようです。民泊を問題なく開業するためには正しい知識をもち、法令について正しい解釈をしなければなりません。ここでは、玄関帳場の誤解しやすい点について説明します。

ポイント1: スタッフ常駐について

旅館業法において玄関帳場にスタッフを常駐させなければならないという規定は明確に記載されていません。旅館業法施行令には以下のような記述があります。

旅館業法施行令第1条1項 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること(引用先リンク)

旅館業法施行令においてもスタッフの常駐については明記されていませんが、宿泊者や宿泊者以外の確認を行うための設備が必要だと記載されています。ICT機器を利用しない場合は、宿泊客のチェックインやチェックアウト際にはスタッフが常駐していた方がよいでしょう。

また、玄関帳場へのスタッフ常駐について、各都道府県で上乗せ条例として定められていることが多いようです。民泊を開業する前にスタッフ常駐についてきちんと管轄の都道府県の条例を確認しておきましょう。

ポイント2: 宿泊者名簿は必要なのか!?

民泊の場合でも宿泊者名簿は必要であり、旅館業法によって定められています。

第六条営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。

宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。(引用先リンク)

宿泊者名簿の記載内容については旅館業法施行規則によって定められています。

第四条の二法第六条第一項に規定する宿泊者名簿に記載すべき事項は、宿泊者の氏名、住所及び職業のほか、次に掲げる事項とする。

一 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号

二 その他都道府県知事が必要と認める事項(引用先リンク)

宿泊者名簿の記載内容は、旅館業法施行規則に明記されているほか各都道府県の条例に記載されている内容も必要です。宿泊者名簿を準備する際は、民泊の営業を行う都道府県の条例をきちんと確認しましょう。

ポイント3: パスポートのコピーは必要なのか!? 

パスポートのコピーを必要ですが、法的には定められていません。ただし、旅館業法施行規則において、外国から来た宿泊者の国籍とパスポート番号を宿泊者名簿に明記することを定めています。

旅館業法施行規則 第4条の2法第六条第一項に規定する宿泊者名簿に記載すべき事項は、宿泊者の氏名、住所及び職業のほか、次に掲げる事項とする。

一 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号(引用先リンク)

国籍とパスポート番号の記載はテロ対策の一環として規定されているようです。もしも、相手がテロリストの場合、国籍やパスポートの記入欄にウソの情報を書く可能性を考えなければなりません。パスポートのコピーを取ることで宿泊者名簿に記載されている情報が正確かどうかを確認できます。

ポイント4: 対面での鍵の受け渡しは必要なのか!?

民泊の場合でも対面での鍵の受け渡しが必要な場合があります。鍵の受け渡しについて旅館業法規則に以下の記述があります。

旅館業法施行規則第4条の3 二 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。(引用先リンク)

旅館業法施行規則に「宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し」と記載してあります。民泊において玄関帳場の設置義務はありませんが、宿泊客へ対面式で鍵を受け渡さなくてよいという記載はありません。

ただし、厚生労働省で定めた基準を満たしたICT機器を利用した本人確認やチェックインが玄関帳場の代替えとして認められています。鍵の受け渡しをICT機器を利用して行う場合は対面式での鍵の受け渡しは不要です。

ポイント5: 施設の管理責任は必要なのか!?

施設の管理責任はもちろん、民泊を経営している人にあります。玄関帳簿を設けないからといって宿泊客が滞在中の施設管理責任がなくなるわけではありません。宿泊客が施設へ滞在中に急病や家事といった緊急を要する不測の事態がおこる可能性もあるでしょう。

第四条の三 旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号。以下「」という。)第一条第一項第二号の基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。

一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。(引用先リンク)

旅館業法施行規則には「事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。」と記載されてあり、宿泊客が滞在中は施設の管理が不要というわけではありませんので注意しましょう。

宿泊施設を管理スタッフについても都道府県によって上乗せ条例が制定されている地域が多いようです。管轄の都道府県によって施設管理に関する規定内容が異なります。民泊を営業する地域の条例をきちんと確認しましょう。

さいごに

旅館業法の改正によって玄関帳場の法令が緩和し、新規で民泊営業を考えている方もいるでしょう。しかし、法令が改正したからといって民泊営業が簡単になったわけではありません。民泊へ新規参入するには、きちんとした知識と理解が必要です。

民泊の経営者は宿泊者が滞在している間の安全に対してきちんと責任をもたなければなりません。誤った解釈での民泊経営は法律違反になることはもちろん、宿泊者の安全を脅かす可能性もあります。旅館業法やその関連する法令や条例をきちんと理解し、宿泊客の安全を守れる民泊経営を目指しましょう。

株式会社プレイズは、民泊だけでなく旅館業法でのホテル開発・管理実績を保有しております。これからホテルを開業する場合で何から始めればいいのかわからない場合には、お気軽に弊社までお声がけください。