旅館業法を理解してホテル運営に挑戦!! ホテル開業手順を解説します!!

旅館業法
旅館業法を理解してホテル運営に挑戦!! ホテル開業手順を解説します!!

最近は民泊など個人で宿泊施設を経営する方が多くなってきました。宿泊施設を検討している方の中にはホテル経営を考えている方もいるのではないでしょうか。そこで知っておかなければならないのが旅館業法です。一般的に旅館を経営するにあたって決められている法律だと思っている方も多いでしょう。旅館業法は旅館の営業を始めるための営業許可申請に大きくかかわってきます。そこでこの記事では、ホテルを開業する方へ旅館業法の説明と旅館業法の申請フローや重要なポイントなどをご説明します。

旅館業法の4つの定義


旅館業法は宿泊施設に対して4つの定義を設けており、ホテルや旅館はもちろん、民泊や下宿などについて定義しています。ホテルを経営するつもりで申請したところ、実は民泊の定義におさまるものだったということがないようにきちんと確認しておきましょう。

1. ホテル営業

ホテル営業とは洋式の構造と設備のある施設で宿泊料をもらって人を宿泊させる営業のことをいいます。ビジネスホテルから高級ホテルまでさまざまな種類のホテルがありますが、すべてこのホテル営業の定義に該当します。下宿営業と簡易宿所営業は含まれません。ホテルの分かりやすい特徴として宿泊する部屋が洋室であり、寝具にベッドが使われていることがあげられるようです。

2. 旅館営業

旅館営業とは和風の構造と設備を設け、宿泊料金をもらって人を宿泊させる営業のことです。ホテル営業とほぼ内容は変わりませんがホテルと旅館では宿泊施設に大きな違いがあります。ホテルとの大きな違いとしては畳を使用した和室で寝具に布団を使用する部屋がメインであることがあげられます。なお、下宿営業と簡易宿所営業は含まれません。

3. 簡易宿所営業

簡易宿泊所営業とは、複数の人と共用する構造と設備を持つ施設で、宿泊料をとって人を宿泊させる営業です。具体的な例をあげると、ペンションや民宿、ユースホテル、最近話題の民泊などがあげられます。ただし、下宿営業は簡易宿所営業には含まれません。

4. 下宿営業

下宿営業とは、1か月以上の期間を単位として宿泊料を受けとり、人を宿泊させる営業のことをいいます。ひと昔前の下宿といえば、大家さんの自宅の1室を間借りする形態が多かったようです。昨今では、下宿にも多様性が出ており、管理人さんが常駐している学生アパートやマンションなども下宿とされています。

旅館業法の申請フローについて

ホテルの営業はもちろん、旅館、民泊、下宿と4つの定義に入る宿泊施設の営業を新規に考えている方は、旅館業法に基づく営業許可申請をしなければなりません。ここでは初めて申請する方へ向けて申請フローについて詳しく説明します。

1. 事前相談

旅館を営業するには各都道府県の保健所長の許可を取る必要があります。申請書の提出前にホテル営業を行う予定施設の平面図を持って保健所へ事前相談をしておきましょう。ホテルを営業する建物の構造や設備、衛生管理の基準は法律や条例に基づいて規定されています。それらの規定をクリアしなければ申請許可がおりません。事前相談することで、規定に満たない箇所を指摘してもらえるので、申請書を出す前に改善ができます。

2. 営業許可申請書の提出

事前相談においてホテル営業をする建物が規定をクリアしたら、申請書を提出しましょう。各都道府県の保健所のホームページにて申請書がダウンロードできます。 申請する地域によっては申請書の様式が異なる場合もあるので、なにか疑問や不明な点がある場合は管轄の保健所で確認しましょう。また、申請の際には申請手数料が必要です。申請手数料が不明な場合も管轄の保健所にて確認できます。

3. 保健所による施設調査

申請書が受理されると、保健所の環境衛生監視員がホテル営業をする施設の調査をします。調査日は保健所と相談して決定するので、ホテル営業を開始する前に必ず受けなければ。ホテル営業開始前は忙しい時期です。なるべく余裕をもって調査日を設けるとよいでしょう。

4. 営業許可書の交付

保健所による施設調査に不備がなければ、数日中にホテルの営業許可書が交付されます。施設調査にて営業施設の基準に達していないと判断されると、営業許可書の交付はされません。そのため、営業開始予定日が決まっていても営業を開始することができないので、注意しましょう。

5. 営業許可

営業許可書の交付を受けて、営業許可がおります。ホテルの営業開始日に向けてスタッフや備品などの準備が完璧でも営業許可がなければ、ホテル営業は開始できません。スムーズに営業許可がおりるように事前準備をしっかりとしてから申請しましょう。

旅館業法申請で押さえたい項目について

申請フローを滞りなくするためには旅館業法という法律の中で押さえておかなければならない項目がいくつかあります。きちんと項目を理解して申請をすればホテル営業開始予定日を余裕を持って迎えられるでしょう。ここではホテル営業をする際に旅館業法申請で押さえておきたい項目をご説明します。

1. 客室床面積

客室の構造部分の合計床面積基準は7平方メートル以上と旅館業法により定められています。ただし、ベッドなどの寝台を置く客室は9平方メートル以上と定められているので注意しましょう。客室床面積とは寝室、浴室、トイレ、洗面所など宿泊者が通常立ち入る部分の床面積の合計です。クローゼットなどの収納部分を除いて計算します。建築図面の床面積の算出方法とは異なるので、注意が必要です。

2. 入浴設備

浴室にはお湯と水が必要になるので、浴室の蛇口から出る水には清浄な水を常に供給する必要があります。浴槽も1日1回以上お湯を抜いて清掃し、再びお湯を張り直しましょう。共同浴室の場合は、利用者が使用している間は、常に浴槽に湯水を満たしておくことも必要です。これらは、いずれも法律によって定められています。浴槽水を循環させる場合の管理法も旅館業法で細かく定められているので、確認しましょう。

3. 用途地域

ホテルを営業する用途地域によっては営業が認められない場合もあるので注意が必要です。学校、児童福祉施設、各都道府県の条例によって定められた施設の約100メートルの区域内の場所に開業するホテルが、該当施設の周辺や施設環境を著しく害すると判断された場合、ホテルを開業することはできません。

4. フロントの設置

フロントは、法律用語を使用すると玄関帳場といいます。この玄関帳場は設置する場所が定められているので注意しましょう。フロントは、ホテル施設の出入り口や宿泊者が宿泊施設を利用する際に必ず通る通路に面した場所に設置しなければなりません。また、ホテルスタッフと宿泊者が必ず対面式で応接できる構造でなければならないという規定もあります。

5. 施設名称掲示の義務

ホテルを営業する施設には公衆から見やすい場所に施設名称を掲示しなければなりません。こちらも法律で定められている義務です。施設名称の掲示をする看板は既存のものを使用しても差し支えはありません。また、看板は公衆が認識できる程度の掲示が必要です。あまりにも小さすぎる看板などは法律違反となるので気を付けましょう。

6. 宿泊者名簿

宿泊者名簿についても法律によって細かく定められています。宿泊者名簿には、宿泊客の氏名・住所・職業・性別・年齢・前泊地・旅行先・到着日時・出発日時・宿泊する客室名を記載しなければなりません。外国からの宿泊客の場合、パスポートのコピーやバスポート番号の記入が必要になります。なお、作成した日から3年間の保管が必要です。宿泊者名簿はホテルで感染症が発生したり、感染者が宿泊したりした際に感染経路の特定のために規定されている法律です。パスポートに関してはテロ対策の一環で決められています。

7. トイレ

適当な数のトイレの設置も法律で定められています。トイレがついていない客室が2部屋以上ある場合は男女別に分けた便器を設置した共同のトイレを設置しなければなりません。ただし、1棟貸し切りでトイレが設置してある場合や1フロア貸し切りでそのフロア内にトイレを設置している場合は必要ありません。

8. フロントの代わりにICT機器を導入する場合

最近では、フロントを設けずにICT機器を導入しているホテルもあります。その場合、宿泊者の緊急時にホテルスタッフや管理会社に連絡できる電話などの通信設備を客室や通路に設置しなければなりません。 連絡を受けたホテルスタッフや管理会社が徒歩や車などで約10分で駆けつけられる体制を整えなければならないことも法律に明記してあります。ほかにも宿泊客やそれ以外の利用者の顔が明確に判断できるビデオカメラなどの設置も必要です。

9. 関係機関への手続き

ホテルを経営する場合、建築基準法や消防法などホテル経営に関連する法律が複数定められています。旅館業法に基づく営業許可の申請をしても関係機関の法令で規定された基準に満たない場合は営業許可がおりません。旅館業法だけでなく、関係機関の手続きもきちんとしましょう。

10. ホテルの施設内について

宿泊施設についても法律で規定されています。ホテル内の照明や採光は宿泊者が安全かつ衛生的に過ごせ、スタッフが滞りなく業務をできる必要な明るさにしなければなりません。ほかにも防湿措置や施設内の換気についても規定があります。また、ホテルに飾ったりする図画や置いたりする文書は善良な風俗を害してはならないという規定もあるので、掲示物などのインテリアについても注意しましょう。

さいごに

ホテルを営業するには、旅館業法の基準を満たして申請をしなければ営業許可がおりません。ホテルの営業開始予定日に向けて準備を頑張っても、申請がおりなければホテルの営業はできません。そのような事態を防ぐためにも旅館業法についてきちんと知識を深め、不備の無い申請書類を準備する必要があります。しっかりと準備をして、ホテル営業をはじめましょう。