特区民泊とは!? 特徴や可能地域を解説!!

特区民泊
特区民泊とは!? 特徴や可能地域を解説!!
民泊と言えば、2018年6月に施行された新法民泊が一般的ですが、国家戦略特区で認められる民泊である特区民泊についてもおさえておくべきです。
本記事では、国家戦略特区の概要や国家戦略特区で行われる「特区民泊」について解説しましょう。

国家戦略特区とは!?

国家戦略特区についてご存知ない方がいらっしゃるかと思いますので、国家戦略特区について説明します。

国家戦略特化について

国家戦略特区とは世界で一番ビジネスをしやすい環境を整えることを目的として生まれた制度のことです。その地域内では大胆な規制緩和が行われていて、税制面においても優遇されています。平成26年5月に最初の区域が指定され、今では全国各地に存在しています。

アベノミクス成長戦略を実現させるための施策の1つとして実施されました。これまでにも特区は存在していました。しかし、従来のものは自治体や団体から国に提案をするという流れでした。それが、国家戦略特区の場合には、国が主体的に関わっていて、スピード感のある決定が行われます。国と地方自治体、民間事業者が対等な立場から会議に参画して、連携しながら計画を作成していくのが特徴です。

国家戦略特区の具体例

たとえば、兵庫県の養父市が国家戦略特区に認められています。農業の担い手不足や耕作放棄地などの問題を解消することを目的としています。これまでは認められていなかった民間事業者によって農地取得をすることなどが可能になっています。

ほかには、東京都大田区が国家戦略特区に認められています。こちらは空き家や空きマンションの問題を解決するために民泊事業の推進が行われているのが特徴です。東京オリンピックを開催するにあたって、外国人向けの宿泊施設の不足が予想されていることから、宿泊施設を補うことを期待されているのです。

北九州市も国家戦略特区として認められています。こちらでは、ユニット型指定介護老人福祉施設について、従来のユニットごとに共同生活室が必要という基準が緩和されて、複数のユニットにおいて共同生活室を一体的に運営できるという規制緩和が実施されています。これによって、介護士の業務を効率化させることができ、介護ロボットの実証実験も行われています。

国家戦略特区のメニュー

国家戦略特区にはさまざまなメニューが存在しています。その地域の問題を解決するために自治体が主体となって既存のメニューを活用して問題解決を図ることが可能です。たとえば、「住宅容積率の緩和」というメニューがあります。建築基準法では容積率の規制があるのですが、国家戦略特区においては特例として容積率の緩和が行われるのです。

「空港アクセスバス」というメニューもあります。こちらは、現行の制度では運賃の設定について厳しいルールがありました。それが、国家戦略特区では特例措置として柔軟に運賃や運行計画を決められるようになります。「特区民泊」というメニューもあります。旅館業法の許可基準を緩和することによって、従来よりも簡単に民泊を始められるようになりました。

特区民泊の特徴

国家戦略特区について説明しましたが、特区で行うことができる民泊である「特区民泊」とはどのようなものなのかについて以下で説明していきます。

特区民泊とは?

特区民泊とは、国家戦略特区における旅館業法の特例のことです。特区民泊の認められた地域においては、従来の旅館業法の規制が緩和されます。これによって、民泊サービスを始めやすくなりました。外国人旅行客に利用させることを目的としていて、これによって宿泊施設の不足を補おうとしています。

また、特区民泊において設置された施設は、外国人だけが利用できるわけではありません。利用者については何の規定もなく、日本人を利用させることも可能です。特区民泊の目的が外国人客の利用を想定しているだけであり、結果的に日本人ばかりが利用することになったとしても問題ないのです。この点については勘違いしている人が多いため注意しましょう。

民泊については、民泊新法による規制緩和も行われています。ただし、民泊新法と特区民泊はそれぞれルールが異なっているため、それぞれにメリットとデメリットがあります。

最低滞在日数は2泊3日

特区民泊では最低宿泊日数として2泊3日以上というルールがあります。民泊新法や旅館業法ではこのような制限はありません。したがって、特区民泊においては、1泊のみの利用を受け付けることはできないのです。

もともと6泊7日以上だったものが緩和されて現行のルールになりました。ただし、地域によっては独自の条例が定められていて、最低宿泊日数が異なる可能性があるため、事前に調べましょう。自治体の条例のほうが優先されます。

年間営業日数の制限がない

民泊新法の場合は、年間の営業日数に180日以内という制限があります。一方、民泊特区については、制限がないため、年中営業を続けることが可能です。そのため、民泊サービスによって、本格的に利益を上げたいと考えている人にとっては、都合のいいルールといえるでしょう。

管理業者への委託業務の規定がない

民泊新法では管理業者に管理業務を委託することがルールとされています。一方、特区民泊の場合にはこのような規定はありません。したがって、住宅宿泊事業者のみで民泊の運営を進めていくことができます。管理業務の委託に関する細かな規定が存在しないため、管理業者を利用してもよいししなくても構わないのです。

特区民泊の認定要件

特区民泊の認定を受けるためにはさまざまな要件が定められています。まず、宿泊施設が特区民泊のできる地域内にあることです。次に1居室の床面積が25㎡以上あることです。さらに、客室には専用の出入り口が設置されていて、台所やトイレ、洗面所、浴室も用意しなければいけません。

また、民泊事業者に対する責務がいくつか規定されています。たとえば、外国人旅行客の滞在に関して必要な情報提供をしなければいけません。施設の使用の仕方や緊急時の情報などです。滞在者名簿を備え付けなければいけません。周辺住民に対して民泊サービスを運営することをしっかりと説明して納得してもらうことも必要です。仮に周辺住民から苦情や問い合わせがあれば、それに適切な対応をすることが求められます。騒音などの問題を起こさないことも重要です。

このような要件や責務を満たしていれば、民泊サービスの提供を続けることができます。

消防設備などの設置について

基本的に民泊新法でも特区民泊でも、民泊施設の運営をしたいならば、消防設備などの設置は必須となっています。ただし、民泊新法においては条件によっては不用なケースがあります。一方、特区民泊の場合は、どのような施設であっても、消防設備の設置は義務となっているため注意しましょう。

特区民泊と旅館業を比較した際のメリット・デメリット

旅館業では滞在期間の制限はありませんが、特区民泊では2泊3日以上の宿泊が条件です。また、特区民泊では近隣住民へのトラブル防止措置も義務付けられています。

ここでは旅館業法と比べた際の、特区民泊のメリットとデメリットを詳しく解説します。

メリット

特区民泊は旅館業に比べて手続きが簡単なことが大きなメリットです。特区民泊の手続きは次のような手順で行います。

  • 自治体に申請する
  • 近隣住民へ周知する
  • 書類審査を受ける
  • 事業開始
  • 旅館業は付近の見取り図や水質検査などが必要ですが、特区民泊は複雑な手続きが必要ありません。旅館業はフロントにスタッフを置かなければいけませんが、特区民泊なら無人でチェックインを行えます。
    また、特区民泊はマンションの一室や一軒家などの旅館より狭い範囲で営業できます。旅館業法では一人当たり3.3㎡以上の部屋が必要ですが、特区民泊なら人数に関係なく25㎡以上の広さが必要です。

デメリット

旅館業と比較した際の特区民泊のデメリットは次の2つです。

  • 近隣住民への周知
  • 滞在期間の制限

旅館業は開業する際に近隣住民に周知する必要はありませんが、特区民泊は営業する前に知らせる必要があります。民泊は管理人不在で宿泊者が生活する場合があり、ゴミの投棄や喫煙などで近隣住民とトラブルになるケースが多いためです。トラブルを防止するためにも近隣住民に周知することが大切です。

旅館業は滞在日数の制限はありませんが、特区民泊では2泊3日以上の滞在が定められています。そのため、出張などの利用には適しません。

特区民泊と民泊新法を比較した際のメリット・デメリット

民泊新法には年間で180日以上営業してはならないことが定められていますが、特区民泊は営業日数の制限がありません。そのため、民泊新法で営業できない期間をレンタルスペースとして活用する手間も省けます。

しかし、特区民泊は限られた場所でしか営業できないため、自分が営業したい地区が特区ではない場合もあります。特区民泊と比較した際の民泊新法のメリット・デメリットを解説します。

メリット

特区民泊は民泊新法と違い、年間の営業日数に制限がありません。民泊新法は年間180日以下で営業しなければいけないため、収益を上げるためには、180日以外をレンタルスペースやマンスリーマンションとして活用する必要があります。

一年間の3分の1は民泊として営業し、3分の2は民泊以外で活用しましょう。

一方で特区民泊は営業日数の制限がないため、民泊のみで収益につながりやすいです。民泊で営業したい方には特区民泊をおすすめします。また、民泊新法のほうが手続きが簡単なので、すぐに営業を始めたい方は民泊新法がよいでしょう。

デメリット

特区民泊は限られた地区でしか営業できません。そのため、自分が民泊を営業したい地区が特区であるか確認しておくことが必要です。特区に指定されている地域は次の11か所の地域です。

  • 関東圏(東京都・千葉県成田市・千葉県千葉市・神奈川県)
  • 関西圏(大阪府・兵庫県・京都府)
  • 宮城県仙台市
  • 秋田県仙北市
  • 新潟県新潟市
  • 愛知県
  • 広島県
  • 愛媛県今治市
  • 福岡県福岡市
  • 福岡県北九州市
  • 沖縄県

この地域の中で特区民泊の条例が定められている地域のみ営業ができます。この地域で民泊を始めたいなら、特区民泊を利用すれば日数の制限なく運営できるので、売上も上げられるでしょう。

国内で特区民泊が許可される地域(2019年9月7日時点)

7つの地域で許可されている

2019年9月7日時点において特区民泊が認められている地域は全国に7つあります。7つの地域は下記の通りです。

・東京都大田区
・福岡県北九州市
・新潟県新潟市
・千葉県千葉市
・大阪府
・大阪府大阪市
・大阪府八尾市
・大阪府寝屋川市

全国で初めて特区民泊がスタートしたのは2016年1月29日であり東京都大田区が第一号です。次に2016年4月に大阪府の一部の地域で認められ、同年10月には大阪市でもスタートしました。ただし、事業者の数については、その大部分が大阪市に集中しています。そのほかの地域については、事業者の数が100にも満たないのが現状です。大坂市では特区民泊における民泊の申請数が増加していて、衰える気配はありません。

民泊は個人の空き家や空き部屋を貸し出すことを目的とした制度ですが、特区民泊において半数以上は法人による営業となっています。一方、民泊新法のほうは、特区民泊よりも気軽に民泊を始められることから、個人事業者のほうが割合は大きいです。

大田区の特区民泊について

大田区では特区民泊の認定を受けていると、区の観光施策と連携してサービス拡充を目指すことが可能です。たとえば、「大田区ウェルカムショップ」や「大田区まちかど観光案内所」への登録ができます。これらは大田区に宿泊する外国人旅行者などに快適な滞在を提供して、食事や買い物などを楽しんでもらおうという趣旨のもとに実施されている制度です。さまざまな支援メニューが存在しています。

たとえば、「大田区ウェルカムショップ」に登録していると、区より支援メニューを提供してもらうことができ、これによって外国人への接客やサービス提供のサポートを受けられます。区より資料やセミナーなどが提供されるため、接客に活用できます。

「大田区まちかど観光案内所」とは、観光案内を行ったり、パンフレットなどを提供したりする施設や店舗のことです。こちらに民泊施設で登録するならば、観光マップやパンフレットなどを施設内に設置し、トイレや休憩スペースを施設利用者以外にも可能な限り提供して、ステッカーを見えやすい場所に掲示することが求められます。東京オリンピックを控えているため、大田区では外国人観光客への対応に力を入れていて、民泊特区もその一環といえます。

大阪の特区民泊について

大阪府では特区民泊施設の認定を促進し、利用者の利便性や快適性の向上を図るために環境整備促進事業補助金というものを用意しています。申請をすれば、許可されると補助金を受け取ることができるため、民泊施設の環境整備に役立てることができます。ただし、補助対象の事業が定められているため注意しましょう。たとえば、居室内のWi-Fi整備やホームページの多言語対応、消防設備の整備などです。これらの費用について、1/2以内の補助率で上限額は1事業者につき40万円とされています。

新潟市の特区民泊について

新潟市では市街化調整区域においてのみ民泊の実施を認めています。新潟市ではグリーンツーリズムや地方創生と特区民泊を連携することを目指しているのが特徴です。グリーンツーリズムとは、自然や農業を身近に楽しめるような場を提供することです。特区民泊を認めることで、空き家を活用できて、新潟の自然や農業に触れてもらい、田園部の活性化や移住の促進などを図ろうとしています。したがって、新潟市の特区民泊においては、グリーンツーリズムを楽しむ機会をできるだけ設けることが事業者に求められます。また、近隣の観光事業者とも連携を図ることに努めなければいけません。

まとめ

国家戦略特区というものを国が制定しており、そのなかには特区民泊を実施している地域があります。特区民泊で民泊を始める場合には、民泊新法などとの違いについて注目しましょう。特区民泊の制度を上手く活用することで、民泊サービスを成功させられます。