民泊新法で定められているルールとは?東京23区内のルールを解説

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民泊新法で定められているルールとは?東京23区内のルールを解説

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民泊は法律に基づいてサービスの提供がされなければいけません。ただし、法律とは別にそれぞれの自治体も条例として細かなルールを決めています。自治体の民泊条例を守らなければ、民泊ビジネスを始めることができません。そこで、東京都23区内で住宅宿泊事業を始める際に知っておくべきチェックルールについて解説しましょう。

民泊新法とは

民泊新法とは、住宅宿泊事業法とも呼ばれ、平成306月に制定された法律です。住宅宿泊事業者(民泊オーナー)、住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)、住宅宿泊仲介業者(Airbnbのような民泊仲介サイト)がこの法律の対象者となり、民泊の運営をする上で国からの許可が必要であることを規定しています。 

そしてこの法律では、民泊における安全面・衛生面の保証や騒音やゴミ出し等の近隣住民間とのトラブル対処方法について、新たなルールを定めていることも特徴の一つです。

また、この新しい法律によって、個人が民泊ビジネスに参入するためのハードルが低くなり、一定の基準を満たした住宅は届出の手続きを行うだけで民泊の営業を合法的に行うことが可能になります。

民泊新法が作られた背景

民泊新法が作られた理由は日本の民泊事業が抱えてきた課題に対応するためです。その課題とは、旅館業法を無視した違法民泊と、近隣住民とのトラブルです。この章では、それぞれの課題に対して、民泊新法がどのように対応するのかをご紹介します。 

違法民泊をなくすため 

違法の民泊業者や団体に対する取り締まりはこれまで厳しいものではありませんでした。また、民泊新法施行前は、民泊を営業するための手続きや申請が非常に煩雑で、規定が厳しかったのです。 

2016年の厚生労働省の調査によると、営業許可を得て民泊ビジネスを行っている民泊物件はわずか16.5%でした。(参考サイト:https://suumo.jp/journal/2017/03/22/130233/)

それゆえに、民泊が犯罪やトラブルの温床になったという経緯があります。民泊新法を通して、違法民泊を行う業者の取り締まりと罰則の強化を目指します。

近隣住民からの苦情をなくすため 

地域住民からよくある苦情としては、

  • ゴミ問題
  • セキュリティや治安の問題
  • 騒音
  • 喫煙問題

といったものが代表的です。これまでは、苦情の届出や相談を受け付ける窓口が明確に設定されていませんでした。

しかし、民泊新法を機に国による民泊苦情相談窓口が設置されたため、違法民泊物件の近隣住民は苦情をその窓口を通して伝えることができるようになりました。苦情を受けているにも関わらず、改善が見られない民泊運営者は業務停止に追い込まれたり、罰金が課せられる場合があるなど、民泊新法による取締が強化されたのです。

民泊新法で定められている項目

1. 民泊は届出制

これから民泊を行いたい事業者は、都道府県知事等に対して届出をしなければいけません。事前に届出をせずに営業を行うのは違法営業であり、処罰の対象となります。また、民泊新法では要件を満たしていれば、届出をするだけですぐに事業を始められます。許可や認定を受ける制度ではなく、比較的容易にスタートできるのが特徴です。

2. 民泊を行う住宅に対して要件が定められている

民泊に使うための住宅には、設備要件と居住要件があり、これらを満たしている必要があります。

設備要件として次の4つの設備が設置されていなければいけません。

・台所
・浴室
・便所
・洗面設備

また、居住要件として下記のどれかに該当している住宅でなければ民泊を始められません。

・人の生活の本拠として使われている家屋
・入居者の募集が行われている家屋
・その所有者、賃借人または転借人によって随時居住の用に供されている家屋

たとえば、民泊のために新築の投資用マンションを購入したとしても、誰かが居住をした履歴が一切ない物件の場合には、民泊をするための住宅として認められないのです。

3. 年間180日まで民泊サービスを提供できる

実際に営業可能な日数は、180日という上限が法律で定められています。ただし、これは最大限に可能な日数のことであり、条例によって各自治体が日数制限を独自に設けることも可能です。そのため、民泊をまったく認めない自治体もあります。

住宅を民泊に利用できる日数に制限があったとしても、上手く活用することは可能です。たとえば、賃貸物件の空室リスクを回避するために利用できます。空室のあるときだけ、空き部屋を民泊として貸し出すケースがあります。

4. さまざまな義務が設けられている

民泊新法では、利用者が安全に宿泊でき、周囲の人達にも迷惑がかからないように、事業者に対してさまざまな義務を課しています。法律で定められている義務は下記の通りです。

・宿泊者などの安全確保
・外国人観光客である宿泊者の快適性や利便性の確保
・宿泊者名簿の準備
・宿泊者の衛生確保の措置
・騒音防止やゴミの処理など必要事項の宿泊者への説明
・苦情の処理
・標識の掲示

これらの義務を守ることによって、利用者や近隣の人達に迷惑をかけずに事業を展開できます。

5. 家主居住型と家主不在型の違い

家主居住型とは、管理者が同じ物件のなかで生活しながら物件の運営管理を行うというタイプです。家主の住民票がある物件で民泊をしなければいけません。また、誰か利用者がいるときには、家主も不在せずに物件内にいることが求められます。たとえば、家主が家を空けることになり、誰もいない家を民泊として貸し出したいといったケースでは、家主不在型として扱われます。

家主不在型の場合には、業者に物件の管理運営を委託しなければいけません。利用者のいる間は、必ず物件の管理者がいなければいけないのです。また、委託を受ける業者は、住宅宿泊管理業者としての登録を受けている必要があります。国土交通大臣に対して申請をして、5年ごとに登録の更新をしなければいけません。

参考) 家主不在型!? 家主居住型!? 民泊新法が定める2つの民泊の違いとは!?

東京23区の対策

民泊新法では、それぞれの自治体が民泊に関する独自のルールを定められるとしています。そのため、東京23区内でも、それぞれの区ごとに民泊に関するルールは大きく異なっているため注意しましょう。民泊をどのエリアでスタートさせるか決める際には、その自治体のルールを踏まえたうえで検討するとよいです。

法律とは異なる制限を条例で設けるのには理由があります。たとえば、住宅地域のなかにある物件に観光客などを泊まらせると、さまざまな迷惑行為が行われる可能性があり、治安や騒音などの問題が生じることがあるからです。その地域で住んでいる人が安全で快適に暮らせるように、それぞれの自治体が独自の判断で条例を制定しています。意見交換会を開催して、多くの意見を集めてから条例を定めた自治体もあります。

たとえば、すでに民泊営業による被害に困らされている地域もあるのです。そのようなエリアでは、条例で厳しい制限が設けられても仕方がないでしょう。特に居住地域や学校のある地域においては、営業できる期間がかなり限られていることが多いです。

1. 千代田区のルール

千代田区では、区内を4つの区域にわけて、それぞれの業態ごとに制限を設けています。たとえば、文教地区と学校周辺の区域は制限が厳しいです。これらの区域では、日曜日の昼から金曜日の昼までの間は、民泊営業をしてはいけません。また、家主不在型で管理者が常駐していない物件に関しては、文教地区や学校など周辺の区域で民泊営業は原則不可となっています。

上記の2つの区域以外では、基本的に民泊営業を年間180日まで行ってよいとされています。ただし、家主不在型で管理者が常駐していないタイプの物件については、人口が密集している区域で日曜日の昼から金曜日の昼まで営業できません。

2. 港区のルール

家主居住型に関しては港区では特に制限を設けていません。民泊新法の定められた範囲内で事業を展開できます。しかし、家主不在型については、実施の制限が行われています。住居専用地域では、家主不在型の物件について春・夏・冬の休み以外の期間に民泊営業をしてはいけません。実施が制限される期間は、下記の通りです。

・1月11日正午から3月20日正午
・4月11日正午から7月10日正午
・9月1日正午から12月20日正午

3. 新宿区のルール

新宿では住居専用地域においてのみ月曜日の正午から金曜日の正午までの間、民泊の営業を実施することができません。住居専用地域以外であれば、法律の規定通りに事業を展開できます。また、新宿区では、届出された民泊住宅を公表しています。所在地や連絡先などを区のホームページなどで公開しているため、利用者が住宅を認識しやすいです。

実際に新宿区で民泊を始める際には、周辺住民への事前説明も求められます。届出をする7日前までに近隣住民に書面による周知をして、そのことを新宿区へ報告しなければいけません。

4. 中央区のルール

中央区では、区内全域について、月曜正午から土曜正午まで、宿泊させてはいけません。

5. 文京区のルール

文京区では、住居専用地域と文教地区について、月曜日から木曜日まで利用者を泊まらせてはいけません。また、これから事業を始める際には、届出の15日前までに近隣住民に対して周知しなければいけません。

6. 台東区のルール

台東区では、常駐の管理者がいない家主不在型の物件において、区内の全域について、月曜正午から土曜正午まで物件を利用させていけません。家主居住型については、特に制限はないです。

7. 江東区のルール

住居専用地域のなかで第一種中高層住居専用地域については、月曜正午から土曜正午まで物件に宿泊させてはいけません。ただし、祝日の正午から翌日の正午までは除きます。

8. 品川区のルール

品川区では、近隣商業地域および商業地域を除く区内全域において月曜正午から土曜正午まで物件を利用させてはいけません。

9. 目黒区のルール

目黒区では、区内の全域で日曜正午から金曜正午まで民泊物件として宿泊サービスの提供をすることを禁じています。また、届出をする15日前までに近隣住民に対して周知しなければいけません。

10. 大田区のルール

大田区では、ホテルや旅館の建築ができる用途地域でだけ営業が認められています。住宅専用地域では、事業をスタートさせられません。また、大田区は都内で唯一の特区民泊の対象区域となります。

参考リンク: 混乱しやすい合法民泊3種類の違いを解説します

11. 世田谷区のルール

世田谷区では、住居専用地域において月曜正午から土曜正午までの間は民泊営業が禁止されています。ただし、住居専用地域でも近隣からの反対がない場合に関しては、平日でも運用が可能となります。運用可能日数は制限された日数と同日となります。また、祝日の正午から翌日の正午までは除きます。

12. 渋谷区のルール

渋谷区では住居専用地域と文教地区において、春と夏と冬の休み以外に民泊営業をすることが禁止されています。ただし、管理会社が100メートル以内に事務所を設けている場合には、運用が可能となります。

13.中野区のルール

中野区では住居専用地域で月曜正午から金曜正午まで民泊営業をすることが禁止です。ただし、祝日の正午から翌日の正午までは除きます。さらに、住居専用地域で民泊をスタートするためには、対面によって本人確認をしなければいけません。宿泊者から本人確認書類を提示してもらい、本人確認をしっかりと行って、宿泊者名簿を作成します。また、外国の方が利用される場合には、パスポートの写しを保管しなければいけません。

民泊で食事を提供するためには、食品衛生法に基づいて許可を取る必要があります。苦情や問い合わせ、これらへの対応などの記録は3年間保管しなければいけません。届出をする際には、7日前までに周辺の住民に対して事前周知する必要があります。

14. 杉並区のルール

杉並区では、家主不在型について、住居専用地域において月曜正午から金曜正午まで物件を利用させてはいけません。ただし、祝日の前日の正午から祝日の翌日の正午までは除きます。家主居住型については、特に制限はないです。

15. 荒川区のルール

区内全域において、荒川区では月曜正午から土曜正午までの営業が禁止されています。ただし、祝日の正午から翌日の正午までの期間は除きます。

16. 板橋区のルール

板橋区では、住居専用地域にある物件について、日曜正午から金曜正午までサービスを行うことを禁止しています。ただし、祝日の前日は除きます。

17. 足立区のルール

足立区では住居専用地域において月曜正午から金曜正午まで利用者を泊まらせてはいけません。

18. 練馬区のルール

練馬区では住居専用地域で月曜正午から金曜正午まで宿泊させてはいけません。ただし、祝日の前日正午から祝日の翌日正午までの期間は除きます。

19. 特に制限のない自治体

東京都内では、民泊営業について特に制限を設けていない自治体があります。特に制限がないのは、墨田区、豊島区、北区、葛飾区、江戸川区です。これらの区は民泊に対して比較的寛容といえるでしょう。ただし、これから新たに条例が制定される可能性はあります。現在のところは、制限がないというだけです。

さいごに

民泊新法が制定されたことで、Airbnbなどを用いて情報を発信しながら民泊ビジネスに着手する人は増えています。ただし、民泊新法とは別にそれぞれの自治体が条例を定めていて、東京23区でも地域ごとにルールが微妙に異なっているため注意しましょう。特定の区域での営業が禁止されていたり、特定の期間は営業できなかったりするのです。各自治体のルールを踏まえたうえで、どこで営業するのか考えてみましょう。

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