民泊運営のために保健所の事前確認は何を行うのか!?

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民泊運営のために保健所の事前確認は何を行うのか!?

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これから民泊の運営を始めたいならば、保健所に事前確認をしてもらわなければいけません。しかし、具体的に保健所が何をチェックするのか、許可を得るためにどんなことに気をつければいいのかわからない人も多いはずです。そこで、民泊の届出の際に保健所に事前確認をしてもらうことについて、詳しくみていきましょう。

保健所は何を見ているのか!?

1. 民泊の許可を得るには保健所の事前確認が必要

民泊サービスとは旅館業に該当し、許可を得ないと営業することができない旨が民泊新法(住宅宿泊事業法)にて定められています。そして、許可申請にあたっては書類の提出や手数料の支払いが必要となり、さらに施設検査が行われます。

保健所の職員などが民泊として利用する物件を実際に検査して、基準に適合していることを確認することになります。立入検査を行い、基準を満たしていると確認されない限りは、許可を取得することができません。

2. 構造設備基準などをチェックされる

民泊の営業をする際には、施設が構造設備基準を満たしていることが求められます。構造設備基準の内容は主に下記の通りです。

・客室の延床面積が33平方メートル以上(収容定員が10名未満の場合については、3.3平方メートルに収容定員の数を乗じた面積)
・階層式寝台を用いる場合には上段と下段の間隔をおおむね1メートル以上にすること
・適当な採光、換気、防湿、照明、排水の設備を有すること
・公衆浴場が近接にあるなどの場合を除き、入浴設備を有すること
・洗面設備を有すること
・適当な数の便所を有すること
・その他都道府県が条例によって定める構造設備の基準に適合すること
構造設備基準については、自治体が条例によって独自に基準を定めているケースがあるため注意しましょう。たとえば、東京都中央区では、玄関帳場などの設備を設けることを基準としています。また、建築基準法や消防法などにも適合した施設であることが求められます。細かい部分については、個別に判断されます。最終的には保健所が認めるかどうかの問題となるのです。

3. 主にハード面を見られる

保健所による検査でチェックされる項目は主にハード面のものです。トイレや洗面所、ベットといった設備が宿泊施設としてふさわしいものとなっているのかを確認されます。そのほかの備品については、施設検査の時点で揃っていなくても問題はありません。ただし、ベッドのシーツやマットレス、枕といったものは検査の時点で用意しておく必要があります。洗面所にはハンドソープを設置しておきましょう。そういった細かな部分まで見られる可能性があるのです。

保健所から許可をもらうためにすべきこと

1. 事前相談をする

これから民泊サービスの許可を得るためには、事前相談をすることを求めている自治体が多いです。この場合は、実際に申請をする前に都道府県の旅館業法担当窓口において相談しなければいけません。

相談の際には下記の内容について確認を求められることがあります

・施設の所在地
・施設の図面
・建築基準法への適合状況
・消防法への適合情報
・マンション管理規約(民泊が禁止されていないかを確認するため)

特にマンションで民泊を始める場合には、管理規約を確認するだけではなく、事前に管理組合のほうへ相談をすることが望ましいです。マンションは管理規約によって用途が制限されていて、民泊を始めるならば、事前に承諾を得ていないとトラブルに発展する可能性があります。借りているマンションで民泊を始めるならば、貸主や管理会社に問い合わせてみましょう。

また、建築基準法によって民泊の営業が制限されていたり、特別な手続きが必要だったりすることがあります。この点を確認するために、事前に都道府県の建築基準法担当窓口に相談しておきましょう。たとえば、用途変更をしなければ行けないケースがあります。

ほかにも、民泊を始める施設では、防火安全対策が求められます。消防用設備を設置したり、出火防止の対策を整えたりする必要があるのです。こちらについては、最寄りの消防機関に相談すれば、詳しく教えてもらえるでしょう。

2. 許可申請

民泊営業の許可申請をするためには下記のものが必要となります。

・許可申請書
・営業施設の図面
・そのほか自治体が条例などで定める書類

申請書の書き方や添付する書類などについては、自治体ごとに異なっています。事前相談をしておけば、許可申請で用意するべき書類について詳しく教えてもらえるでしょう。自治体によっては、許可申請を行う前に事前審査を実施するケースがあります。

多くの自治体で求められる書類として下記のようなものがあります。

・登記事項証明書
・状況見取図
・配置図・平面図
・構造設備の仕様図
・使用承諾書
・水質検査成績書
・土地・建物登記簿謄本
・検査済書

3. 施設検査

申請をすると保健所職員による施設検査が行われます。このときには立ち会いが必要となるため注意しましょう。申請した内容に間違いがないのか細かい部分までチェックされます。質問されることもあるため、それに的確に答えられるようにしなければいけません。

4. 許可、営業開始

施設検査を終えて、申請が受理されれば、許可を得られるため営業を始められるようになります。申請から許可を得るまでにかかる期間は数週間程度です。ただし、自治体や時期によって申請にもっと時間がかかることもあるため、余裕を持って申請することをおすすめします。

民泊施設に求められる設備について

1. トイレの数

民泊は旅館業法に基づいて施設の環境を整えることが求められています。そのうち、トイレの数については、おおまかな数しか規定されていません。適当な数のトイレを設置するとだけ記されています。トイレの数については、各自治体が細かく規定していることが多いです。

たとえば、墨田区では、トイレの数について下記のような規定があります。

・定員5名以下 2つ
・定員6~10名 3つ
・定員10~15名 4つ

ほとんどの自治体では、客室内にトイレが設置されていない場合は、最低でも共同トイレが2つ必要となることが多いです。共同トイレとは、男性用と女性用が区別されているもののことです。定員が増えるごとに求められるトイレの数は増えていきます。そのため、普通のマンションを用いて民泊を始める場合には、トイレの増設をしなければいけないケースも出てくるでしょう。

また、トイレには手洗い設備がなければいけません。これは衛生的な問題であり、必ず手洗いをする場所を確保することが求められます。

トイレの広さや設備についても、自治体によって細かな基準が求められるケースがあります。たとえば、あまりにも狭いトイレだと許可されない可能性があるでしょう。換気設備を設置することは必須条件です。掃除用具を保管するための場所を設けることも望ましいとされています。

トイレが和式か洋式かについては、トイレの機能を有していればどちらでも構いません。ウォシュレットも必須ではないです。

2. 洗面設備

民泊ではトイレ以外の場所に手洗いの設備を設置することが求められます。たとえば、洋式トイレのタンクの上に手洗いの設備がついていたとしても、それは洗面設備とは認められません。独立した洗面設備を設置することが求められます。

洗面設備は宿泊者が利用しやすい位置にあって、十分な広さを有することが求められます。清掃を簡単に行えて、耐熱性で不浸透性の材料が用いられており、流水受槽式の構造になっている必要があります。また、洗面設備には石鹸や消毒液、タオルなどを置くための設備が備え付けられていることが望ましいとされています。

給水栓の数は収容定員によって適当な数を有することが望ましいです。基本的には5人あたり1個以上の割合が求められます。ただし、30人を超える場合については、10人あたり1個以上の割合でよいです。

収容定員が増えると蛇口の数を増やす必要があるため、そのためのリフォームをしなければいけないケースが出てきます。

3. 入浴設備

民泊施設に入浴設備が不用なケースとしては、当該施設に近接した公衆浴場がある場合です。公衆浴場とは、一般的な銭湯のような施設のことです。たとえば、スポーツクラブのなかにある浴場は、会員になれないと使えないため、入浴設備として使わせることはできません。また、近接した公衆浴場の基準は、それぞれの自治体ごとに具体的な距離が定められていることが多いです。たとえば、民泊施設の建物敷地の角より半径300メートル以内の距離に公衆浴場がなければいけないという自治体があります。

公衆浴場を入浴設備の代用にしたい場合、最終的な判断をするのは保健所です。構造設備基準には細かな規定がされていないのですが、これはそれぞれのケースにおいて保健所が個別に判断をするためです。物件ごとに個別に保健所に相談することが大切です。

ほとんどのケースでは、公衆浴場を入浴設備として使うことは認められず、施設内に入浴設備を準備しなければいけません。また、公衆浴場を使うことが認められたとしても、施設内にシャワー設備の設置が求められることが多いです。

入浴設備に関しては、最低限のものがあれば基準を満たすことができます。ただし、実際に施設を利用する人が満足して入浴できるものでなければ、施設の満足度を下げることになるでしょう。たとえば、民泊の利用者のなかには外国人が多く、日本人よりも身体の大きな人が入浴するケースを想定できます。この場合は、大きめの浴室を準備しておかないと窮屈な印象を与えてしまうでしょう。

4. 保健所の基準はあくまでも最低基準

保健所が民泊施設に求めている基準というのは、あくまでも許可を得るための最低基準に過ぎません。基準を満たして民泊を始められたとしても、その設備を利用者が満足するとは限らないのです。そのため、基準を満たすだけではなく、利用者のニーズに合った設備を設置することを考える必要があります。場合によっては、基準をかなり上回るような設備を用意しておくケースもあるでしょう。

最後に

民泊施設の許可を得るためには保健所の事前確認を受けなければいけません。法律の定めている基準に適合していなければ、民泊の営業は認められないのです。トイレや洗面設備、入浴設備などについて、細かな基準が定められています。自治体が個別に条例で基準を細かく設けているケースもあります。事前に窓口に相談して、しっかりと準備をしてから申請を行いましょう。