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日本で現在民泊を運営されている方、またこれから民泊を運営したい方にとっては、民泊の規制について理解したいというニーズが根強くあるはずです。日本の民泊規制は海外の民泊規制も参考にされていることから、海外の事例を無視して民泊を語ることはできないと思われます。
そこで本記事では、日本の民泊規制を改めて整理しつつ、海外の民泊規制について整理し特徴を考察してみたいと思います。
世界的に見ても規制の多い日本の民泊業界
言わずもがなですが、日本国内で民泊営業を行おうとすると、あらゆる法律をクリアしなくてはなりません。その中でも民泊新法が定める民泊営業180日問題は最も民泊事業の収益性に影響する規制かと思います。また、民泊管理事業の外部委託に関しても民泊事業者の頭を悩ませる問題ではないでしょうか。
1.営業日数は年間180日まで
民泊新法においては、民泊の営業可能日数は180日と制限されています。特区民泊や旅館業法の許可を取得済みの簡易宿所などの場合は日数制限はないです。新法民泊での営業は180日を超えることができないため、民泊事業者が得られる収益性は一気に下がります。(その場合はマンスリーマンションなどの別形態の活用法もある)
2.民泊管理業務の外部委託
家主居住型の民泊以外ですと民泊管理業務は住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。民泊オーナー(住宅宿泊事業者)自身は住宅宿泊管理業者として民泊物件を管理することももちろん可能ですが、登録するためには相応の資格が必要となります。詳細は以下の記事をご参照ください。
また、民泊の管理業務を外部委託する場合には、もちろん外部委託コストが別途かかることと、民泊ゲストとの交流が薄れたりと、良い評価がもらいづらくなるなどのリスクもあります。
3. 対象物件は住居のみ
民泊の基本的な意味合いは、「使われていない物件を宿泊施設として活用することで有効活用する」という点に集約されます。この意味では、使用履歴のない新築物件では、民泊新法の定める条件に合致するものでしか運用できません。
このように日本で民泊事業を営業するとなると多くの障壁があることを理解しなくてはなりません。
海外の民泊に関する規制リスト
日本の民泊営業に規制が多いことがわかりましたが、海外で民泊営業をする場合にはどのような規制があるのでしょうか!?
厚生労働省による第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会の中で海外主要都市における民泊規制についての資料が以下のようにまとめられています。
国 / 地域 | 民泊関連規制(貸主) | 民泊関連規制(仲介業者) |
イギリス(ロンドン) | ・建物の転用許可が必要 (90日以内で住居を一時宿泊施設にする場合は許可不要) | なし |
フランス(パリ) | ・自治体への届出が必要 (パリ市等の場 合は、利用形態変更の許可が必要) ・年間8ヶ月以上居住の場合は対象外 |
・滞在税について、仲介事業者が納付代行 |
スペイン(バルセロナ) | ・自治体の許可 ・利用者へのサービス保障 ・利用者の身分証の登録と警察への情報提供 |
なし |
イタリア(ローマ) | ・営業に当たっては事前の自治体への届出と承認が必要 | – |
ドイツ(ハンブルク) | ・所有者が年間4ヶ月以上居住の場合に観光客への貸出可能 ・許認可が必要 ・ベルリン特別市では、住居の目的外使用には許可が必要 |
・当局の許可を得ていな い住宅の広告を掲載してはならない |
オランダ(アムステルダム) | ・利用者の滞在が2ヶ月まで、同時の宿泊者は4人までであること等を条件として許可は不要 | ・旅行者税の自動支払いに関する契約 |
オーストラリア(NSW州、VIC州、QLD州) | ・各州法に基づき事業許可等が必要 ・QLD州ではパーティ利用について制限できる旨の州法 |
なし |
カナダ(トロント) | ・一般ビジネスとして事業登録、ライセンス等が必要 ・自治体によっては、B&Bについては事業 許可が必要(自宅の部屋の短期間賃貸・ アパート又貸しは該当しない) ・賃借中の家屋の譲渡・又貸しには大家の事前同意が必要 |
– |
アメリカ(ニューヨーク) | ・市への登録が必要 ・3戸以上が入居する共同住宅で、入居者が不在の状態で、30日未満の貸出を行うことは違法 |
なし |
アメリカ(ポートランド) | ・開始前に市からの許可と更新が必要 ・貸出者は年間270日以上の当該住居の居住が必要 |
・宿泊税の納付(宿泊料を受理した業者) ・市の要請に基づく、貸主・物件の情報公開 |
アメリカ(ナッシュビル) | ・貸出者は毎年市からの許可が必要 ・一度に4部屋以上の貸出禁止、騒音等規制、食事の提供場所規制 |
– |
アメリカ(サンフランシスコ、サンノゼ) | ・短期賃貸物件としての届出・許可が必要(サンフランシスコ) ・貸主が市外に出る場合、連絡先登録が必要。 ・貸出は年間180日まで(サンノゼ)。 |
・貸主に対する注意喚起が必要 |
シンガポール | ・住居の賃借について、6ヶ月未満の賃借は禁止 | なし |
厚生労働省「諸外国における規制等の状況について」を基に作成
上記の資料内容を確認することで、以下のようなことがわかります。
1.民泊の許認可に関する規制
日本で民泊オーナー(住宅宿泊事業者)として民泊事業を行う場合には、住宅宿泊事業届出書に必要事項を記入した上で、住宅の所在地となる都道府県知事に届出を行う必要があります。
海外の主要都市においても、特定の条件を差し引いて見た場合には、ほぼ全ての都市で事前の届出が必要であることがわかります。
2.民泊貸出者の年間居住日数に関する規制
日本の場合ですと、家主不在型民泊では管理業務を外部委託することから、家主の居住日数の定めがありません。家主居住型民泊の場合ですと、2時間以上の不在時間は認められない旨規制が定められています。
Airbnbができた当初から民泊という概念は、現地人の生活を体験することにあるため、海外の民泊では家主居住型民泊を指すことが多く、家主居住型民泊運営が通常となります。海外の主要都市では、以下のように規制が設けられています。
フランス(パリ)・・・年間8ヶ月以上の居住(およそ年間240日以上の居住)
アメリカ(ポートランド)・・・年間270日以上の居住
常に家を離れられない日本と比較すると海外の居住日数はまだ日本よりは規制が弱い印象です。
3.民泊営業可能日数に関する規制
日本の新法民泊の営業可能日数は年間180日と決められています(特区民泊や簡易宿所の場合は対象外)。これは揺るぎなく、それ以上の民泊営業は認められていません。
海外主要都市においても、局所的に規制が設けられています。
イギリス(ロンドン)・・・年間90泊以内なら自治体の承認が不要
オランダ(アムステルダム)・・・年間60泊以内が可能
アメリカ(サンノゼ)・・・180日を超える貸出は禁止
このように見ると、日本の180日は必ずしも少ないとは限らないようです。
まとめ
日本国内で民泊を行う上では、営業180日問題や管理事業の外部委託、また住居物件のみに適用されるなどあらゆる規制が適用されます。一方で、海外の特定地域においても民泊に関する規制は適用されるようです。
許認可に関しては、いずれの地域においても承認が必要な一方で、民泊貸出者の年間居住日数や民泊営業可能日数に関する規制はまばらで、規則性があるわけではありませんでした。
日本国内では、とりわけ営業日数180日問題が収益性の面で最も大きな障壁となりますし、海外の規制動向が日本の政策反映の参考にされることもあるため、プレイズでも引き続きモニタリングしてまいります。